妻がやらせてくれないイライラは普通。ぶつけずに済む対処法

ドライヤーの音が止むのを待って、洗面所の妻に今夜どう?と小声で誘う。鏡越しに届いたのは、ごめん、無理、の短い声だけ。

妻がやらせてくれない夜は、これで何度目だろう。イライラで、耳のうしろがじんと熱くなる。

俺、マジで嫌われてんの?

翌朝の行ってきますは、自分でもわかるほど低い声。そんな自分にも、ほとほと嫌気がさしていませんか?

先に、これだけは言わせて。触れたい気持ちも、断られてムカッとくるのも、人として当たり前の反応です。ただ、認めていいのは胸の内まで。腹立ちを妻へぶつけずに抱える道は、残されています。

男女10人ぶんの話を見比べてみました。浮かび上がったのは、性欲の強さだけでは説明のつかない、疲れや言葉の行き違い。

ここから、3つの順に話を進めます。

・欲が湧く自分に、罪悪感はいらない理由

・妻が首を縦に振らない背景と、イライラが大きくなる仕組み

・腹立ちの矛先を変える、明日からの手立て

目次

妻がやらせてくれないとイライラしても、器が小さいわけじゃない

断られてムッとするのは、心の狭さのしるしとは違います。わけは3つ。

ひとつ目は、性欲が食欲や眠気と同じ、体の自然な働きであること。求める量は人それぞれで、夫婦でずれるのも珍しくない。多く求めるほうが悪者なんてルール、誰も決めていません!

ふたつ目は、イライラの中身が性欲だけではないから。いちばん近くの人に、自分の渇きを二の次にされた驚き。大事にされたい願いの裏返しでもある。

みっつ目は、腹を立てる自分を嫌えること自体が、ブレーキの証拠だから。41歳のなおとさんも、生理の日や断られた夜にイラつく自分が嫌い。街でふと視界をかすめたものに、体がざわつく日もある。性欲の相手は骨が折れる、とこぼすほど。

(はぁ…またイラついてる。こんな自分、ほんと嫌だ)

そう落ちこめるのは、妻を傷つけたくない思いが、まだ胸で温かいからでしょ?

ただ、ここには一本だけ線を引かせて。腹立ちを、脅しや比較、説教、不機嫌の形で妻に向けること。浮気で晴らすこと、無理にさせること。この先は肯定できません。夫婦でも、同意のない性行為は許されない。妻の「今日は無理」は、あなたの人格を否定する言葉とは別もの。断った妻が、翌朝の無言や舌打ちで罰を受けていい理由も、ひとつもない。

妻がやらせてくれないのはなぜ?イライラがふくらむ5つの原因

妻が応じない裏には、産後の体や疲れ、断っている自覚のなさがからむことも。夫の側でも、昔との比較や別の腹立ちが苛立ちを膨らませる。目的は誰かを裁くことではなく、一人の落ち度ではないと腑に落ちること。

産後の体と心が、まだ元の場所に戻っていない

手をつなぐことさえ、さりげなく避けられる。そんな変化に、ぎくっとした?

34歳のまいさんは、産後、夫が男に見えなくなりました。人としては、今も好き。家族に体を求められるのが、どこか不自然。母親になった自分が女に戻ることへの、気持ち悪さもあった。形の変わった体、細切れの睡眠、ホルモンの揺れ。夫婦の夜は、優先順位のずっと下へ。

産後は、体が性より休息を先に選びやすい時期。拒まれているのは人格ではなく、残りわずかな余力のほう、ということも。

疲れて重い背中に、拒絶の字幕を読んでしまう

伸ばした手の先で、妻の背中がこわばる。その一瞬、奥歯をぐっと噛みしめたことは?

なおとさんは、固くなった背中を拒絶と読んできました。けれど妻が口にしていたのは、今日は体が重い、それだけ。ひとつの背中に、二人がまるで別のラベルを貼っていたんです。

しかも厄介なことに、足りない感覚を妻の責任にすると、胸がふっと軽くなる。正直言って、そのほうが楽なんですよね。悪者のはっきりした昔話ほど、読むのが楽なのと同じ。

断る側は、拒んでいるつもりがないことも

話し合おうとしても、疲れてるだけ、とかわされる。身に覚えは?

40歳のひろしさんの家は、立場が逆でした。先延ばしを重ねていたのは、ひろしさん自身。嫌いじゃない、考えすぎだよ、と話を丸めてきた。本人には、断っている感覚がない。妻の前には、今じゃない理由ばかりが積もっていく。限界の先で、離婚届を出したのは妻でした。

上流でダムを閉めている側からは、川下が干上がる様子が見えにくい。あなたの妻も、あなたをはねつける気などないのかも。

結婚前の夜と比べて、今を減点している

交際中は、誘えば笑って応えてくれた。その記憶と今夜を、比べてはいない?

結婚前の夜を標準にすると、育児と仕事に追われる今は、どこを切っても不足に見える。結婚式の写真と今朝の寝ぐせ頭を並べて、減点していくのに近い(笑)

そう見ている限り、妻の断りのひと言は、自分を否定する宣告に聞こえてしまう。

夜の一回に、ほかの腹立ちまで乗せている

会社で理不尽をのみこんだ日ほど、夜の断りがこたえる。胸に手を当てると、どう?

29歳のこうたさんは、女性嫌いへ傾いていく男性たちを目にしてきた人。好きなときに触れない、口答えされる、つわりや育児を盾にされる。パートナーは開けたいときに開く箱ではないのに、開かないとすねる。

この苛立ちは性の話に見えて、正体はうまく回らない暮らし全体への腹立ち。定員二人のエレベーターに、引っ越しの荷物を丸ごと押しこむのと同じです。ぶつけるたびに、妻との距離は一歩ずつ開いていく。

【体験談】断る夜と断られる夜、4人の現在地

4人とも、まだ解決の途中です。それでも、歯車のずれた場所は見えてくる。

隣に体温があるのに、ひとりの夜が続くけんじさん

36歳のけんじさんは、週に2、3回はしたいタイプ。太ってもいないし臭いもない。なのに、家では何ひとつ動き出さない。二人の関係を、ヤルヤル詐欺と呼んだことも。

一人で済ませれば、という声は百も承知。けれど手の届く距離に妻がいるのに、自分で処理する理不尽さが消えない。

(すぐ隣にいるのに、なんで俺は一人なんだよ…)

言いたいことを吐き出し、少し落ち着いた夜も、並んで眠る気になれずリビングへ。翌朝の声が短くなると、妻はそれを不機嫌と受け取る。短い返事は回転ずしのレーンを一周して、次の夜の断りになって戻ってくるんです。

妻をせこいと決めつけていた、たくみさん

33歳のたくみさんの周りには、やらせてくれないからとアプリを開く男がいます。バレたときの言い訳の定番は、そんなつもりはなかった、お前が応じないから、の二つ。たくみさん本人は、妻の拒否が固くなるのを、妻がせこいせいだと考えていた。

(なんで、そんなに出し惜しみするんだよ)

固くなったわけは、脅しや比べる言葉が誘いより先に出た夜にあった。そう気づけたのは、妻の体がすっかり閉じたあとでした。

脅すほど妻が遠のいた、りくさん

42歳のりくさんは、応じない妻を脅しました。しないなら店に行く、浮気する、離婚する、と。妻の心は余計に冷え、問題はこじれる一方。

脅しで扉をこじ開けようとするのは、鍵穴に接着剤を流すようなもの。安心を壊された体は、義務で応じたとしても、次はもっと固く閉じてしまう。閉じた扉を、りくさんは負けと受け取る。負けた気がすると、声がまた一段大きくなる。

ハグの先が見えて、ハグもしないまいさん

まいさんの夫は、産後も以前のままでした。愛しているはずなのに、愛されている手ごたえがない。手を取り合って老夫婦になりたかった。夫は、そう苦しさを打ち明けてきた。

(好き。でも、今はそういうことじゃない)

ハグくらいならしたい。けれど腕を回せば、その先まで求められる。だから、ハグごとやめてしまう。奥まで勝手に開く自動ドアなら、手前で足を止めるしかないでしょう。

噛み合わないまま、2年以上。夫のイライラは、先の見えないトンネルのよう。でも、まいさんの拒否はトンネルの壁ではなかった。壁に見えていただけ。

これからどうする?イライラの矛先を妻からそらす工夫

目指すのは、性欲を消すことでも、黙って耐え続けることでもない。イライラが妻に届く前に、いったん自分の手のひらで受け止める。

まずは、欲しがる自分を認めて、言葉をひとつ見直す

体が妻を求めるのは、自然なこと。そう認めたうえで、見直したい言い方がひとつだけ。やらせてくれない、の一言です。

この言葉には、許可の仕組みが入っている。申請するのがあなた、判子を押すのが妻。断るたびに、妻は判子を押さない意地悪な係にされてしまう。悪役が続けば、窓口ごと閉めたくもなるでしょ?突然に見える冷たさは、じつは予約済みなんです。

(まさか、夫婦の夜を役所の窓口にしてたのは俺…?)

37歳のあゆみさんには、夫が自分を女として見ていないのが痛いほどわかる。なのに、よそへ目を向けることは許してもらえない。見ないのに手放さない矛盾が、拒否をさらに硬くしていく。

翌朝、子どもの弁当を黙って詰める妻の背中。あれは拒絶ではなく、判子を押す係を静かに降りた人の背中です。あなたを責める話ではありません。ほかの言い方を、誰も教えてくれなかっただけ。

断られた夜から試せる、小さな工夫

断られた夜ほど、目が冴えてしまう(泣)

頭に血がのぼったときは、腹立ちの中身を三つに分けてみる。性欲そのもの、後回しにされた寂しさ、思うようにいかない毎日への腹。一枚のレシートも、明細を開けば三行あるはず。性欲の行は、一人で処理したってみじめじゃない。寂しさの行は、言葉にして妻へ。結局、腹の行は生まれた場所で片づけるしかない。

理由が見えないときは、問い詰めずに聞いてみる。45歳のさとしさんも、妻がしたくない理由を考えるほうが先だと諭された一人。触れ方が合っていないのか、子育て中の体が休みを欲しているのか。妻だけ楽で自分はモヤモヤ、という見方が、性欲を妻の快適さより上に置いている、とも。たずねるときは、妻の楽さを主語に。どうなら楽?と聞けば、責める響きが消えていく。

ハグまで遠のいたときは、その先は求めない日を先に約束してみる。まいさんがハグを控えたのも、腕の先に次の要求が見えたから。

「今日はハグだけ。その先はなしね」

先に渡しておけば、腕を回すハードルが下がるはず。

妻の顔に疲れがにじむときは、家事や育児の分担と睡眠を見直してみる。夜の皿洗いと寝かしつけを引き受けるのが、意外と効く!ぐっすり眠れた夜は、どんな口説き文句より体をほどくことも。

脅しや比較が喉まで出かかったときは、いったん部屋を出てみる。外で済ませるぞ、よその妻はもっと、正しいのは俺だ。どれも、足りない気持ちが大声になっただけ。店に行っても、積もった年月は減りません。すり減るのは、妻の側に残っている話し合いの余白のほう。

カッとなりやすい自分の、別の顔

すぐ熱くなる性分も、使いよう。

短所に見えるところ裏返すと活かせる場面
断られるとすぐ顔に出る気持ちにうそがつけない寂しいと、素直に言葉で伝えられる
怒る自分を責めてしまう妻を傷つけまいとする心がある脅しや説教の前に部屋を出られる
断られた理由を考えこむ相手の事情を想像できる疲れに気づき、家事や睡眠を先回りで整えられる

妻がやらせてくれないイライラの、よくある質問

Q.妻に断られ続けるのは、もう愛情がないから?

一概には言えません。産後のまいさんも、人としては好きなまま、体だけが置いてきぼりの状態でした。疲れや出産後の体調、断るたびに悪役になる重さが、先に立つ場合もあります。

Q.夫婦なのに拒むのは、妻のわがまま?

いいえ、断るのは妻の当たり前の自由です。法律上も、婚姻関係の有無にかかわらず、同意を欠いた性交は罪に問われうるもの。求める言葉が、させて、ひとつになると、妻の体は道具のように映る。そう見られた側にとって、断ることは身を守る手段なんです。

Q.外で発散すれば、家の空気はよくなる?

むしろ、家の拒否はより固くなっていきます。発散で消えるイライラは、ほんの一時だけ。38歳のゆうじさんは、妻がしないなら乗り換える、という発想を耳にした人。それでは次の相手にも失礼だ、というのが彼の見方。

まとめ

妻がやらせてくれないとイライラするのは、隣の人を求める心がまだ生きているから。ただ、その矛先をどこへ向けるかで、二人のこれからが分かれていきます。

・性欲も、断られた悔しさも、胸の内なら抱えていい ・背景には、産後の揺れや疲れ、断る側の無自覚が隠れている ・腹立ちは性欲、寂しさ、毎日への不満に分け、脅しや説教に変えない ・結婚していても同意が土台。抑えが利かなくなる前に相談を

させて、以外の言葉は、妻が余白を残してくれている今なら、まだいくらでも選べます。

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この記事を書いた人

パートナーに打ち明けられない嗜好、十年続いたセックスレス、自分でも名前のつけられない欲望。
ひとつひとつのケースは特殊に見えて、その奥にあるのは「知られたい」と「嫌われたくない」のあいだで揺れる、ごく平凡な感情です。
フェティシズム、セックスレス、性の不一致、ごくふつうの人たちの不器用な誰にも言えない性の悩み、ひとりで抱えず和らげられますように!

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