予約の前の晩、クローゼットを開けたまま手が止まる。脱ぎやすい服のほうがいい?下着は、新しいものに替えておく?
セックスセラピーって、日本では実際に何をするんだろ…
セラピストで調べると、白い相談室のすぐ下に、照明を落とした部屋が並ぶ。裸になるの?体をさわられるの?はぁ…考えるほど、指先から体温が引いていく。
ほっとできる話から、先に始めますね。性の悩みを扱う医療や相談の窓口なら、多くは服を着たまま。体への施術もなし。50分ほど椅子に座って話し、小さな宿題を持ち帰る。中身は、ほぼそれだけです。
そんな場所を調べはじめた自分を、恥じることはないんです。行ってみて戸惑った人も、虚しさを抱えて帰った人も。どちらの原因も、あなたの体の外にあります。
セラピーの名がつく部屋に入った5人の話に、途中でやめた家の声も重ねました。中をのぞく前の下見は、次の3つ。
・相談先を探すことが、恥ではない理由
・日本のセックスセラピーの中身と、思い描いた姿がずれるわけ
・窓口の選び方と、今夜さっそく試せる小さな練習
セックスセラピーを考える自分は、恥ずかしい人じゃない
性のことで専門家を頼るのは、恥ではなく手当ての一つ。体の不調で病院を探すのと、根っこは変わらない。堂々としていい根拠は、三つあります。
まず、窓口の多くでする中身は、服を脱がずに話すこと。裸にされるのでは、どこかを触られるのでは。その想像が足を止めているなら、ひとまず息をついて大丈夫!相談室では、体への施術は基本的に行いません。話の中心にくるのも、行為の細かな手順とは違う。二人の間で何がすれ違ったのか、のほう。
次に、中身を知らないのが、むしろ当たり前だから。通ったことのある人が、身近にいない。友だちとのランチで、さらりと出せる話題でしょうか?説明を読んでも、いまいちぴんとこない(泣)
怖さを生んでいるのは、臆病さではなく、手がかりの少なさなんですよ。
最後に、拍子抜けや虚しさは、体が壊れている合図ではないから。セラピストの一語が、目的のまるで違う場所をいくつも指しています。期待と部屋が食い違えば、誰だってうつむいて家路につくはず。
(やっぱり、私の体がおかしいのかな…)
その読み違いで、検索語をもう一つ増やすのは、ここでおしまいに。
日本のセックスセラピーは実際に何をする?想像と食い違う4つの原因
たいていの窓口でするのは、座って話すことと、触れ合いを少しずつ戻す宿題です。それでも想像とずれやすいのには、4つの理由が絡んでいます。知っておけば、自分の体を疑わずに済むはず。
映像の中のセラピスト像が、先に頭を占めている
セラピーと聞いた瞬間、薄暗くて湿度の高そうな部屋が浮かびませんでしたか?
映像作品が描くセラピストは、誰かの体を治してあげる役まわり。その姿を連れて入ると、待っているのは蛍光灯の明かりと、向かい合った椅子。あっけないほど事務的です(笑)
話すのは、肌が遠のきはじめた時期。拒む側の胸にある怖さ。求めた夜に、返された言葉。出来事を時系列に並べ、痛みや恐怖に名前を付けていきます。
意外と、夜の手順の話は少ない。中心は、疲れきった側と、ひとりぼっちだった側のすれ違い。同じ食卓で、二人がどう行き違ったのかです。映像を思い描いて来た人なら、落胆するほうが自然でしょう。
誰かに直してもらう一回を、買いに行ってしまう
一度行けば、体が元どおりに動き出す。そんな期待、胸のどこかにありませんか?
実際に手渡されるのは、家でこなす宿題。まさか、持ち帰りの課題が出るなんて!最初は、目的を持たずに手を重ねるだけ。段階を踏みながら、触れ合いを暮らしに戻していきます。感覚そのものに意識を向けるこの方法は、センセート・フォーカスと呼ばれるもの。体の症状があれば婦人科や泌尿器科につなぎ、薬と組み合わせる場合も。
しかも、保険がきかないことが多い。一回で治る施術の値段だと思うと、損をした気分にもなるでしょう。高い雑談だったと、3回で見切りをつけた夫婦もいたほど。二人で通い始めても、片方だけが残ることも。
話した晩に、体がすぐ熱を帯びるとは限りません。ぬか床に沈めたきゅうりだって、漬けたその夜は生の味しかしないでしょ?
セラピストという同じ呼び名で、別の部屋が並んでいる
調べるたび、入浴や施術を伴うお店が混ざって、頭がこんがらがったことは?
そうしたサービスも、入り口は面談とそっくり。けれど目指す先は、関係の修復とも治療とも別。選ぶ人を裁く気は、少しもない。
困るのは、期待が逆向きになったとき。宿題を出す部屋に施術を求め、施術の部屋に夫婦の修復を求める。結局、どちらも空っぽのまま幕が下りてしまう。体は反応したのに、翌週の配偶者の肩は冷たいまま、なんてことも。
お店での一回のほうが手応えはある、と言う人も。ただ、手応えと、翌月の食卓に起きる変化は別の成果です。同じ名前のバス停でも、路線が違えば降りた先の景色はまるで別物ですよね。
性の悩みの専門家が、まだ少ない
問い合わせ先を探して、スクロールばかり長くなる夜は?
日本では、性の問題を専門に扱う医療者やカウンセラーは、まだ限られているようです。似た名前の別の場所に、先に入る人も珍しくない。そこでするのは、問診と薬か、夫婦の会話か、教材を使った学びか、お店での施術か。どれも間違いとは言えない。ただ、一つの言葉で期待をそろえるのには、どうしても無理が出る。
【体験談】話す部屋に通った2人、別の部屋にたどり着いた3人
看板の言葉は同じでも、扉の向こうの景色は5人それぞれでした。
手だけの宿題に、2回拍子抜けしたみおさん
38歳のみおさんは、レスの相談をした先で、性療法を勧められました。想像していたのは、映像作品に出てくるようなセラピスト。誰かが、この体をどうにかしてくれるはず。
実際は、50分座って話すだけ。触れ合いが途絶えた頃から今までを、順番にたどって終わりました。持たされた宿題は、今夜は手だけで、その先を目指さないこと。
(え…これがセラピーなの?)
施術がないことに、みおさんは2回、肩すかしを食らいます。
何度か通ううちに、転機が訪れます。二人の夜は、いつしか出来ばえを検品する時間と化していた。話しながら、そこに思い当たったんです。2回目の宿題は、手の温度だけを言葉にすること。治療というより、ようやく名前が見つかった段階。みおさんの夜は、いまだ道の途中です。
してもらうつもりが、話す練習だったけんじさん
41歳のけんじさんが抱えていたのは、緊張すると体が途中で止まる、心因性の悩み。セックスセラピーで検索すると、見つかった窓口の半分は薬の相談。残りは、50分話す場所。
正直言って、最初は抵抗があったとか。誰かに何とかしてほしくて来たのに、求められたのは、自分の口で語る練習のほう。
(しゃべる練習をしに、わざわざ来たのか…)
部屋でしたのは、失敗した夜の記憶を古い順に並べ直すこと。そして、次の夜を勝負の夜と呼ばない約束をつくること。地味すぎて、治ったとはとても言えない約束です。
手の感覚を口に出す宿題は、最初、突っぱねた。ところが、拒んだ週のほうが止まりはかえって深くなる。その週、窓口の人はこう口にしました。
「薬は橋、話は地図、宿題は歩行練習」
3か月通ったころ、手がほんの少しだけ震えない夜が来ました。セラピーが効いたと断言する人もいれば、月日が過ぎただけと見る人もいる。どちらの見方にも、うなずける部分があります。
相談室のような始まりだった、明美さんと夕菜さん
41歳の明美さんが予約したのは、同じ言葉で検索に出てきた、別系統の店でした。34歳の夕菜さんの予約先も、同じ系統です。
二人とも、始まりは長い聞き取り。雑談をはさみながら、希望を細かく確認される。形だけ見れば、カウンセリングそのものです。そのあとに続いたのが、入浴と施術の時間でした。
経験したことのない感覚を知りたくて、こうした時間を選ぶ人だっている。とはいえ、関係を話し合う部屋とは、そもそもの目的が違う。その時間をセラピーと呼ぶかどうかは、受けた本人が決めること。
病院で涙がこぼれた、40代の男性
自分はもう、男として終わりなのか。その答えを確かめたくて、一人で出かけた40代の人もいます。流れ作業のような時間が終わったあと、胸に残ったのはこの声だけ。
(俺は、何をやってるんだ…)
のちに彼は、病院で泣いたのだとか。涙の理由は、施術の腕とは関係ありません。確かめたかった問いを、治療という看板の下で買ったこと。選んだ部屋と胸の問いは、最初から別の方角を向いていた。
これからどうする?日本のセックスセラピーを、実際に何をするかで選ぶ
探したいのは、一回で解決してくれる場所より、目的に合う部屋です。中身を確かめて決めるほど、予約のあとで悔やむ夜は減るはず。
まずは、誰かに治してほしかった気持ちを認める
くたくたの夜、誰かの手に丸ごと任せたくなる。その気持ちを、甘えだと切り捨てなくていい。長く一人で抱えてきた人ほど、そう願って当然です。
ただ、多くの相談室には、あなたの代わりに直す手は用意されていません。置かれているのは、自分の足で進むための道具と、隣で伴走する人。期待した魔法がなかったとしても、体に見放された証拠とは違います。
予約の前と今夜にできる、小さな準備
予約をためらう夜は、今ほしいのが会話か、医学か、経験かを一つ選んでみて。直したいのは体の反応か、関係の言葉か、経験の空白か、と置きかえても大丈夫。行き先を決めずに窓口を回るのは、白紙の問診票でぴったりの処方を待つようなもの。
窓口を比べるときは、中身と料金、保険の扱い、服を脱ぐ場面の有無を先に尋ねる。前もって明快に答えるところなら、入ってからの食い違いは起きにくい。直る、経験できる、を真っ先に約束する宣伝なら、予約の手をいったん止めてみて。
今夜できることを探すなら、何かを目指さずに、手のひらだけ重ねてみる。気持ちよさは脇に置いて、温かいか冷たいかだけを一言で伝え合う。相手の返事が鈍い日や、やめてと告げられたら、その場ですっと引く。断っても、次の日の空気がとがらない。その保証があってこそ、この練習は続けられます。
早く楽になりたい焦りを、窓口を選ぶ力に変える
答えを急ぐ気持ちだって、使い方しだいで窓口選びのコンパスに。
| 短所に見えるところ | 裏返すと | 活かせる場面 |
|---|---|---|
| 一回で変わる方法を探してしまう | 変わりたい気持ちがまっすぐ | 毎晩の短い練習を続けるとき |
| 性の話を人にするのが恥ずかしい | 自分の気持ちを大切に扱える | 話す前に、伝えたいことを整理するとき |
| 期待が外れると落ちこみやすい | 希望を持って足を運べる | 次の窓口に、目的をはっきり告げるとき |
| 検索を何度も繰り返してしまう | 情報を集める粘り強さがある | 予約の前に、中身と料金を問い合わせるとき |
日本のセックスセラピーで実際に何をするか、よくある質問
Q.セックスセラピーで、服を脱いだり体に触られたりする?
医師や心理職が受け持つ相談なら、ほとんどの場合どちらも起きません。心配なら、予約の前に尋ねておけば安心。お風呂や施術が売りのお店は、目的の違うサービスと考えると迷いにくいはず。
Q.相手が一緒に来てくれなくても、一人で通っていい?
一人でも大丈夫です。二人そろって通う人もいれば、ひとりで通う人もいる。二人で始めて、片方だけが続けることも。自分の怖さや寂しさに名前が付けば、次の会話の言葉も変わってくるかも。
Q.保険はきく?何回くらいで変化が出る?
保険の対象外になることが多く、回数の目安も人によってばらばらです。一度で治る施術ではないので、数回で通うのをやめる人も。3か月かけて、ようやく小さな変化をつかんだ人もいるほど。料金や通い方は、最初の問い合わせで確かめておくと落ち着いて選べます。

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