寝る前、そっと夫の腕に指先をのばす。聞こえてきたのは、寝返りを打つ布ずれの音。目の前には、見慣れた背中だけ。セックスレスで夫に拒否される夜が、またひとつ増えた。天井をにらみながら、もう諦めようかな、なんて考えてしまいますよね。
次に断られたら、マジでもう立ち直れない。
なのに、手をつなぐ夫婦とすれ違うと、喉の奥がぎゅっと狭くなる。手放したはずの気持ちが、胸のどこかでまだ息をしているんです。
諦めかけているのは、あなたが弱いからじゃない。これ以上すり減らないように、心がかけているブレーキです。まだ求めてしまう自分がいるのも、ごく自然なこと。たとえ手放す道を選んでも、負けにはなりません。
レスを抱えてきた10人の女性の話を並べると、選んだ道は見事にばらばら。どれも、その人なりの答えでした。
読み進めると、次の3つが見えてきます。
・諦めかけた自分を責めなくていい理由
・夫が拒む背景と、心が諦めのほうへ流れていく原因
・揺れる心を抱えたまま、明日から試せること
セックスレスで夫に拒否され、諦めたくなるのは弱さじゃない
諦めたい気持ちは、これ以上傷を重ねないための守りの反応です。求める心が残っていても、諦めを選んでも、恥じることなんてない。
熱いやかんにふれた瞬間、考えるより先に手が引っこみますよね。断られ続けた心も、同じ動きをします。
シャワーを済ませて、寝室で待っていたあの夜。今思い出すと、顔から火が出そうですよね(笑)
正直言って、赤面を避けたくて平気な顔をつくるのは、冷たさとは別物です。心がちゃんと、自分の身をかばおうとしている合図!
39歳のえりこさんは、結婚してすぐレスに入りました。夫の布団にもぐりこんでみたこともあります。夫の答えは、やめてほしい、のひと言。
肩を落として、もう諦め状態だと言うえりこさん。それでも、ときどき夫のそばへ寄ってしまう。断られるたび、さみしさがまた一枚、上から塗られていく。近づくのをやめれば、新しい傷はできない。そのかわり、女でいることを自ら返上する気がする、と。
求める気持ちは、スイッチひとつで消せないんですよね。こたつの電源を切っても、中にはしばらくぬくもりが残るでしょう?諦めたはずなのに痛むのは、心がまだ冷えきっていないから。
諦めることを選んだとしても、それは白旗とは違います。登山で途中から引き返した人を、誰も負けとは呼ばないはず。空模様を読んで下山するのも、命をつなぐ立派な技術です。
セックスレスで夫が拒否するのはなぜ?諦めに傾くまでの原因
夫が拒む裏には、疲れや産後の変化、戸惑いが隠れていることがあります。妻が諦めに傾くのは、拒まれた記憶が少しずつ積み重なるから。
疲れや忙しさを理由に、先送りが続いている
平日は疲れた、休日は子どもがいる、旅先では眠い。こんな断り文句、耳になじんでいませんか?
36歳のまきこさんは、夫の断る理由の多さにくたびれました。月に一度と決めようと持ちかければ、決められると萎える。ホテルはお金がもったいないし、家は生活感がありすぎて無理。旅行の夜でさえ、疲れたから気分じゃない、でおしまい。
(断られてるっていうより、今じゃないが一生続く感じ…)
スタンプばかりたまって、景品と交換できないカードみたい。先送りもここまで重なれば、断られているのと変わらない。そう気づいた日から、誘うのはやめた。
妊活や産後をきっかけに、ふれ方を見失う
妊活や出産のあと、夫の手が肩にすら置かれない。そんな日々に、心当たりは?
33歳のさおりさんは、産後の3年間、一度も求められませんでした。最初は、産後のせいだと思うことにしていた彼女。
(上手じゃなくていい。求めてくれるだけで、よかったのに)
ふれてこない優しさが、かえって彼女をひとりぼっちにしていく。もう女として映っていないんだと、夜ごと泣いていたさおりさん。今は関係が少し動いたものの、あの3年の話になると空気が止まるのだとか。
産後に揺れるのは、妻だけとは限らない。父親になったあなたを男として見られない、と言われ、キスまで拒まれた夫もいます。求める側ばかりが目立つけれど、傷ついているのは二人とも。
育児中の妻の拒否が、そのまま固まることも
最初に首を横にふったのは、自分のほうだった。そんな覚えはないでしょうか?
45歳のようこさんの家は、育児中の彼女の拒否から20年以上ないまま。このままでいいのか気になっても、夫の沈黙が、決着のしるしに見える。家庭ごと揺らしそうで、蒸し返せずにいます。
42歳のけいこさんも、育児でへとへとだったころに二度ほど夫を拒みました。それ以来一度もなく、夫も誘ってこなくなった。
(正直、そのほうがラク)
16年近く、その気楽さになじんできた。なのに、夜ふと胸の底がもやもやする。自分はもう、女の数に入っていない気がして。今は、レスは動かない前提で、次の20年の生き方を考えはじめたところ。
責めを一人で背負いこまなくていい。拒んだあの日の彼女も、あれで精一杯だった。拒むのが夫か妻かで、責められる顔ぶれは変わります。けれど、夫婦のあいだにできたくぼみの形は、どちらでも同じ。
断られた記憶が積もり、誘わないほうが楽になる
断られたときの夫の横顔が浮かんで、誘う手が止まる夜。増えていませんか?
こうした記憶は、雨どいにたまる落ち葉に似ています。一枚ずつは軽いのに、いつしか水の通り道をふさぐ。結局、誘わなければ拒まれる場面も生まれない。
厄介なのは、誘わなくなった静けさを夫が平和と受け取ること。まきこさんが声をかけなくなって、2か月。まさか夫が、ボディタッチの消えたことにすら気づかないなんて…。鈍いなあ、と笑ってすませる彼女にも、笑えない夜はあります。
火災報知器の電池を抜けば、部屋はしんと静まり返る。夫はその静けさを、火の気がない証しだと読んでしまうんです。
【体験談】夫に拒まれ続けた4人が選んだ、それぞれの道
4人の行き着いた先は、まるでそろっていません。生き方の問いを変えた人もいれば、傷を抱えて日常へ戻った人も。
聞いてわかった本音と、戻らない3年を抱えるあすかさん
35歳のあすかさんが何度つらいと伝えても、夫は忙しい、疲れてる、のくり返し。
(女として見てほしい。苦しさをわかろうとしてほしい…)
愛してると言い、誕生日も忘れず、子どもともよく遊ぶのに、ふれてはこない夫。嫌われたか冷めたのなら、まだ納得がいくのに。愛があるのにふれない、それがいちばん心をかき乱す。
ふとした夜、彼女は夫にたずねました。
「女として見れなくなった?」
「そんなことはない。どうすればいいか、わからなくなってた」
夫は、彼女を拒んでいたのではなかった。それでも、失くした3年ぶんの夜は、もう取り返せません。今はもう諦めて、消えない傷ごと、いつもの暮らしに戻っています。
行き止まりの先で、問いを立て直したなおみさん
40歳のなおみさんの家で拒んだのは、夫のほうでした。妊活と産後が引き金になったらしく、スキンシップまで消えた。歩み寄っては断られ、へこんで、いら立って、また空回り。
夫婦仲はそれなりなのに、仲のいい夫婦を見るたび胸が締めつけられた。誘ってもだめ、話してもだめ、黙っていても何も変わらない。
(もう、何をしたらいいの…)
そう思った瞬間、心がふっと、先に手を放したといいます。転機は、問いの立て方を変えたこと。レスをどう解くかより前に、この人とこの先どう生きていきたいのか。自分の向き合い方もまずかったのかも、と今は振り返る彼女です。
現状維持を選び、本音の逃げ場だけは作ったちかさん
31歳のちかさんは20代の終わりに、夫へ宣言しました。私ばかり誘って断られるのに疲れた、もう誘わない、と。夫の答えは、それは嫌だから俺から誘う。ところが、それから5年ほど声はかからず。
襲わない系なんて言葉で、お茶を濁すちかさん。守られない約束は、次に話し合う元気まで奪っていきます。
目標に据えたのは、今の暮らしを保つこと。不倫も離婚もしないし、無理に解決しようともしない。代わりに確保したのが、胸の内を吐き出せる場所です。嵐の夜に雨戸を閉めるような、暮らしを守るための手当て。
夫との行為と、自分の人生を切り分けたゆかりさん
34歳のゆかりさんは、レスのなかで3人の子を授かりました。子づくりを終えた時点で、この先ずっとないと決まった感覚があったそう。だから、離婚はしない。けれど、夫にすべてを奪われたまま終わるつもりもありません。
夫との行為は諦めたけれど、女としての人生までは諦めていない。二つは別物だと、自分に言い聞かせている彼女。
割り切れているように聞こえても、そこまでに長い年月がかかっている。20代と30代の一部を、ただ待つことに費やした悔いは、今も胸にくすぶったまま。
これからどうする?諦めるかどうかを急がないための工夫
大切なのは、諦めるか続けるかを、今夜のうちに決めないこと。作り直す、今のまま暮らす、離れる。どの道が合うかは、家の外からは判定できません。
まずは、何を諦めたいのかを仕分けてみる
諦める、とひと口に言っても、中身はひとつきりではない。夫との行為そのもの?わかってほしい気持ちなのか。それとも、女として扱われたい自分までなのか。
引き出しを一段ずつ開けるように、確かめてみて。体の関係は手放せても、期待まではまだ捨てきれない。ゆかりさんのように、全部を同じゴミ袋に入れて出さなくていいんですよ。
今日からできる小さな工夫
夜中の2時に、別れの切り出し方まで考えこんだりしますよね(泣)
もう終わりにしようと思いつめたときは、結論を紙に書き出してみる。夜の頭は、度の合わない眼鏡をかけているようなもの。朝の光の下で読み返すと、意外と違う景色に見えたりします。
もう一度だけ聞くと決めたときは、責めずに問いかける形にしてみる。なんでしないの、より、私のことをどう見ているのか。あすかさんの夫が戸惑いを打ち明けたのも、一つの問いかけからでした。
胸の内がぱんぱんになったときは、本音をこぼせる相手を一人決めておく。友人でも専門家でもいい。閉めきった部屋も、窓を指一本ぶん開けるだけで息がしやすくなるものです。
お風呂上がりに誘えば、という助言がざらりと残ったときは、聞き流していい。この助言に笑えなかったのが、けいこさん。長くふれ合いのない夫婦なら、湯上がりの接近も、ただの不意打ちに映りかねません。
長い拒否のあとに残るのは、手をのばしても届かなかった感触。それが消えないうちは、愛してるの一言さえ、なかなか染みこまないんです。
揺れやすさを、長所として活かす
諦めと未練のあいだを行き来する性質も、見方を変えれば味方になります。
| 短所に見えるところ | 裏返すと | 活かせる場面 |
|---|---|---|
| 断られるとすぐ引っこむ | 心の痛みへの感度が高い | すり減りきる前に休める |
| 諦めきれずに考えこむ | 関係を大事にしてきた粘り強さ | 話し合う前に本音を整理できる |
| 夫の顔色を読みすぎる | 小さな変化によく気づく | 切り出す時期を見きわめられる |
| 弱音を人に見せられない | 家庭を回し続ける責任感 | 愚痴の出口があれば、自分も家も保てる |
一人で抱えきれないときは
48歳のひろみさんは、結婚17年のうち12年近く、何もないまま。夫は彼女が起きる前に出かけ、寝たあとに帰ってくる。交わす言葉は、お疲れさまのひと言だけ。
ストレスで髪が抜け、夜には枕が濡れている日も。諦めた顔をしていても、体は正直に反応してしまう。そのたびに、固めたつもりの決心がぐらりと揺れる。
眠れない、涙が止まらない、髪が抜ける、家事が手につかない。ひとつでも当てはまるなら、一人で抱えこまないで。
二人で向き合うなら、夫婦カウンセリングへ。性の悩みに詳しいカウンセラーや、セックスセラピーを頼る人も。
夫の拒否が続くセックスレスと諦めについて、よくある質問
Q.夫に拒否されるのは、私に魅力がないから?
そうとは限りません。仕事の疲れや、出産を境にした揺らぎ、近づき方を見失った迷いも理由になりえます。本当の理由は、たずねるまで見えないもの。
Q.一度諦めたら、夫婦の関係はもう戻らない?
戻る道が閉ざされたとは言いきれません。本音を知って動き出した夫婦もいれば、わかったまま止まった夫婦も。40代になってから関係が動いた人もいます。年齢で線を引かなくて大丈夫!
Q.夫が拒むのは、体の病気のせい?
体の不調や強いストレスが関わっている可能性もあります。性欲は、年齢や疲れ、心の状態にも左右されやすいもの。気になるなら、責めずに体を気づかう形で、受診をすすめてみては。
まとめ
セックスレスで夫に拒否され続けると、諦めるしかないのかと自分を追いつめがち。でも、ここまで揺れるのは、本気で向き合ってきた証拠です。
・もう誘いたくないのは、弱さではなく心の防御反応 ・拒む理由は疲労や出産後の揺れなど、あなたの価値とは別のところに ・手放すものを行為、期待、自分自身に分けて、夜中に結論を出さない ・心や体に不調が出たら、専門家や医療機関を頼っていい
扉の前で立ち止まる日も、もう一度ノックする日も、鍵を回すのはあなた自身です。

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