通勤電車で、前に立つ人がそっと体の向きを変える。エレベーターでは、隣の人が小さく息を止めた気がした。帰宅して脱いだニットを、つい鼻に寄せてしまう夜。
もしかして私、獣臭い女って思われてる…?
でも大丈夫。においは、あなたの人柄からにじみ出ているわけではありません。汗や皮脂が肌の菌と混ざり、服の生地や気温で濃くなる。ただそれだけの、化学の話です。
気にしてケアしようとしている時点で、だらしない人のはずがないでしょ?
においの悩みを抱えてきた女性7人と、そばでにおいを受け取ってきた3人。10人の話を重ねていくと、原因の多くは意外と身近な場所にありました。クローゼットの中、食卓の上、そして毎月のカレンダー。
このページでつかめるのは、次の3つです。
・においに悩んでも、自分を嫌わなくていいわけ
・獣っぽさを強める原因6つ
・今日から試せる工夫
獣臭いかもと悩むあなたが、自分を責めなくていい理由
においがあるかどうかで、あなたの人としての値打ちは目減りしません。
ひとつ目の根拠は、においの生まれ方そのもの。出たばかりの汗は、ほとんど無臭だと言われています。肌にすむ菌が汗や皮脂を分解したとき、はじめてにおいが立ちのぼる。そこへ化繊の生地や暖房の熱が加われば、こもって濃くなる一方。毎日お風呂に入っていても、条件がそろえば出るのが体臭です。
ふたつ目は、自分のにおいは自分でわかりにくいのが普通だという点。録音した自分の声を聞いて、え、これ誰?と固まった経験、ありませんか。においはもっと厄介で、嗅ぎ続けた鼻はだんだん慣れて反応を弱めます。気づけないのは鈍感だからじゃなく、体の仕組みのせいなんだよね。
三つ目は、においの話がいつのまにか人格の話に化けてしまうこと。不潔そう、自己管理が甘そう。そんな印象に、話が一足飛びで着地する。
においを理由に席を立ったことも、立たれたこともある28歳のゆうこさん。においと人柄は本来無関係なのに、評価の場面では一本の線で結ばれてしまう。その不公平さを、両側から見てきたわけです。
心ない言い方で、においを笑いのネタにする人もいます。その手の噂は伝言ゲームのように広がり、獣臭い女というラベルだけが濃くなっていく。
けれど、本当に身なりに無頓着な人は、こうして原因を調べたりしませんよね。この記事を開いたこと自体が、あなたの丁寧さを物語っています。
獣臭いにおいはどこから来る?考えられる6つの原因
獣を思わせるにおいの出どころは、主に6つ。体質、服の素材、食事、体のリズム、暮らしの環境、香りの重ねづけ。複数が絡み合っていることも、珍しくありません。犯人探しではなく、ひとりで背負いすぎないための地図として。
生まれ持った体質で、汗のにおいが強め
わきの下の汗腺は、数も働きも人によって違います。においが出やすい人がいるのも、そのためと考えられています。
白いシャツのわきだけ、黄ばみが早い。耳あかがしっとりしている。家族にも、汗のにおいで悩む人がいる。いくつ当てはまりました?重なるほど、においの出やすい体質に近いと言えそうです。
体質は、あなたが選んだものじゃない。選べなかったものまで背負い込む必要は、どこにもないんです。
冬の化繊ニットやコートが、においを抱え込む
24歳のみおさんがにおいを指摘されるのは、たいてい冬でした。理由がわかったのは、コートを脱いだ瞬間だったといいます。暖房の強いお店で過ごしたあとは、袖口のにおいがぐっと濃くなる。
アクリルなど石油由来の化繊は、汗や皮脂をため込みやすい素材です。冬だけ人との距離が気になる、そんな季節のくせに心当たりは?まさか、体じゃなく服のほうがにおっていたなんて。マジで盲点!
肉や脂っこい食事が続いた翌日
肉好きの友人たちの体臭に、ゆうこさんはどこか獣っぽさを感じていました。そこで自分の食卓も見直すことに。
(においのために食事まで変えるなんて、大げさかな…)
とはいえ、脂の多い食事の翌日に乗る電車だけは、言い訳が立たなかったとか。肉中心の食事が続くと、皮脂が増えてにおいに響くとされています。
焼肉やから揚げが続いた次の日、わきのあたりがなんだか濃い。そんな朝、身に覚えは?焼肉をやめろ、なんて話じゃありません。おいしいですもんね(笑)
生理や産後など、ホルモンの波
妊娠や出産、生理の周期で、ホルモンのバランスは大きく揺れます。汗や皮脂の出方まで、そのたびに変わりうるんです。
27歳のなつみさんにとって、夏の生理中のにおいは、また違うタイプの獣臭さ。量の多い日にトイレへ立てないまま過ごすと、においは一気に強まる。漏れを防ごうと重ね履きすれば、今度は蒸れが追い打ちに。空調の効いたオフィスで、自分の椅子のまわりだけ空気が淀んでいる気がする。気のせいだとなだめても、帰り道でつい服を嗅いでしまう。
(男の人の加齢臭と、ひとくくりにしないで…)
生理中、人のそばに寄るのをためらった日、ありますよね。35歳のちかさんも、出産をきっかけに体のにおいが変わった一人です。
犬や猫と暮らしていて、においが混ざる
31歳のさやさんの家には、犬がいます。毎日きれいにしている子でも、一緒の時間が長いと、自分の体まで獣っぽくにおってくる。それが愛犬ゆずりなのか、自分自身の体臭なのか。境目がもう、わからないそう。
家のにおいは、髪や服にもしみこむもの。事情を知らない人は、ただ黙って距離を取るだけ。家族以外の人から、部屋のにおいを言われたことは?
香水で隠そうとして、別のにおいが生まれる
においを隠そうと、香水を手に取った25歳のほのかさん。ところが、同僚からは臭いと言われる始末。体のにおいと香料がぶつかると、どちらにも似ていない別物が生まれることがある。しかも、その別物がいちばんきつく感じられる場合も。
においが心配な日ほど、香水やボディミストを重ねていませんか?
【体験談】体臭に悩んだ4人の、転機といまの暮らし
においが消えた人は、4人のなかにいません。ただ、向き合い方は少しずつ変わっていった。
誰も何も言わない職場で、罪悪感を抱えたかなさん
26歳のかなさんは、自分から立つにおいを、女の人のものじゃなかったと表現します。獣みたいなにおい。職場の人たちは、誰ひとり何も言いませんでした。
その沈黙が、かえって罪悪感を太らせていく。対策を頑張ります、と謝るように口にしたかなさん。誰かへの約束に見えて、じつは自分の背中を押すひと言だったのかも。
今も、ぜんぶ私のせいだと沈む日と、考えすぎかもと思える日が代わりばんこ。信じたいのは考えすぎのほう。なのに記憶に居座るのは、沈んだ日ばかり。
(はぁ…なんで悪いほうばっかり覚えてるんだろ)
素材を変えて、座席で縮こまる回数が減ったみおさん
朝のうちは平気でも、夕方の電車では襟元のにおいばかりが頭を占める。冬のみおさんは、ずっとその繰り返しでした。洗濯はきちんとしているのに、肌より先に生地がにおいだす。
(洗ってるのに、なんで…)
転機は、化繊の服から素材を切り替えたこと。完全に消えた、とまでは言えません。けれど、服にこもる量は減りました。電車の座席で肩をすくめる回数も、少しずつ減っていったそう。
産後のにおいと、毎朝向き合うちかさん
妊娠前は、汗のにおいなんて気にも留めなかったちかさん。出産を終えたころ、突然わきがツンとにおいはじめました。
産後のホルモン変化に、睡眠不足、汗のかき方の変化。どれも関わっていて、多くは一時的だと、あとから知ったそうです。理屈はわかっても、子どもの頭を抱くたび、わが身のにおいに意識が向く。毎朝、においの強さを点検するのが、いつしか癖になりました。
(今日もか…)
チェックのたび、母親の顔の下にいる、生き物としての自分と目が合う。負けを突きつけられるような感覚に近いのだとか。
香水をやめて、素肌の答え合わせに迷うほのかさん
同僚に指摘されたあと、結局ほのかさんは香水を手放しました。すると今度は、香りを外した素肌のにおいを、自分では判定できなくなったんです。
(今の私、何のにおいがしてるの?誰か教えて…)
答え合わせを、他人に委ねるしかない。その宙ぶらりんな状態に、いちばん身構えてしまうといいます。採点の返ってこないテストを、毎日受けているようなものかもしれません。
これからどうする?においとの上手なつき合い方
においを消し去るより、上手に距離をとるほうが現実的。減らせる分は減らし、残りの分で自分に×をつけない。
まずは、においを気にしている自分を認める
毎日のお風呂が、罰ゲームみたいになってない?
(今日も念入りに洗ったのに、まだ足りない気がする…)
周りの冷たい視線を自分の中に住まわせると、入浴は許しを請う儀式に変わります。罪ほろぼしのつもりで磨いた体には、ゴールテープがありません。
33歳のけいさんいわく、恋人のにおいは日替わりなのだそう。動物っぽい日もあれば、人らしい日もある。抱き寄せて、ああ生身の体なんだなと我に返ることも。それ自体は、べつに嫌じゃない。彼の胸に引っかかるのは、においそのものより、彼女がそれで自分を嫌うこと。
においがあっても、そばにいたいと思われることは両立するんですね。気にしてしまう自分ごと、そうだよね、と一度うなずいてあげてください。
今日からできる小さな工夫
冬の服がにおうときは、肌に触れる一枚を綿やウールなどの天然素材に替えてみる。みおさんが変わりはじめたのも、素材を見直してから。
においを隠したくなったら、香りを足す前に元を落としてみる。汗はこまめに拭き、わきを洗ってから、香りはごく軽く。上書きより引き算!におい同士のケンカを防げます。
焼肉や揚げ物が続いた日は、次の食事で野菜や魚を増やしてみる。
生理の多い日に限って、会議が長引くのはなぜ(泣)
そんな日は、トイレに立つ時間を先に決めておく。替えのナプキンや下着も、いつもより多めにポーチへ。
犬や猫がいる家なら、出かける服はペットの入らない部屋にしまってみる。体臭との区別も、つけやすくなるはず。
人の鼻を借りたいときは、家族や親しい友人に、正直に言ってねと先に頼んでみる。さやさんも、こう話していました。
「犬じゃなく私の体臭なら、早く直接言ってほしい。治療するから」
正直言って、言う側にもためらいがある。29歳のりょうさんは二十歳のころ、彼女のにおいが理由で別れを選びました。本当の理由は、あの時とうとう言えずじまい。今でも、ハンバーガー店のにおいを嗅ぐと胸がむかむかする。だからこそ、こちらから聞いてしまうのが早道です。
においに敏感なところを、長所として活かす
気にしすぎる自分も、向きを変えれば使える力になります。
| 短所に見えるところ | 裏返すと | 活かせる場面 |
|---|---|---|
| 何度もにおいを確かめてしまう | 体の小さな変化に早く気づける | 季節や周期に合わせて先回りのケアができる |
| 周りの距離や仕草に敏感 | 人の様子をよく見ている | 相手が居心地よく過ごせるよう気を配れる |
| 迷惑をかけたくないと思いつめる | 思いやりが深い | 同じ悩みを抱える人にそっと寄り添える |
思い当たる行があったなら、それはもう立派な持ち物。
一人で抱えきれないときは
においのことが頭から離れず、外出や仕事に支障が出ている。何度確かめても落ち着かず、確認がやめられない。そんなときは、専門家を頼ってください。
わきのにおいや汗の量は、皮膚科で相談できます。デリケートゾーンのにおいがいつもと違う、かゆみがあるといった変化なら婦人科へ。感染症などが隠れている可能性もあります。産後ならではの変化は、出産した医療機関に聞くのも手。確認のくり返しで心がすり減っているなら、心療内科という選択肢もあります。
獣臭いと悩む人によくある質問
Q.自分の体臭って、自分で確かめられる?
鼻だけで判定するのは難しいので、服と人の力を借りるのが近道です。一日着た服は、外の空気を吸ってから、わきや襟のあたりを嗅いでみて。慣れきった鼻が、少しリセットされやすくなります。迷うときは、身近な誰かに聞くのが確実です。
Q.においのせいで、恋がうまくいかないことはある?
距離が近い関係ほど、においが影響する場面はあります。22歳のあすかさんは、体臭のきつい人は無理だと伝えて、告白を断りました。一方で、けいさんのように、においごと相手を受け入れる人もちゃんといますよ。
Q.獣っぽさは、治るもの?
原因しだいで、かなり軽くできます。服や香水、食事が原因なら、工夫で変えやすい部分。産後の変化は、時間がたてば落ち着くことが多いようです。体質によるものでも、皮膚科で治療の相談ができますよ。
まとめ
獣臭いと思われているかも、という不安は、においより重く肩にのしかかるもの。けれど正体をたどると、性格とは関係のない場所に行き着く。
・においは汗や皮脂と菌、服の生地、温度が生むもので、だらしなさの証拠ではない ・原因は体質、冬の化繊、食事、生理や産後の変化、ペットとの暮らし、香水の重ねづけなど ・素材を替える、香りで隠さず元を落とす、信頼できる人に聞く、から始められる ・暮らしに支障が出るなら、皮膚科や婦人科、心療内科を頼っていい
においは季節や周期で揺れても、あなたの芯まで塗り替えることはできない。

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